「みんなの学校」から多様性を考える
2020年1月12日
桑名市で映画「みんなの学校」と出演した木村泰子さんの講演会がありました。
映画「みんなの学校」は、大阪市住吉区にある公立小学校が舞台のドキュメンタリー映画です。
2006年に開設された大阪市立大空小学校。近くの小学校が大規模になり、それと別れる形で開校したそうですが、この学校の特徴は「特別支援学級」がない。障がいがあろうがなかろうが、子供の状況がどうであろうとみんな一緒の学級で授業を受ける学校です。
その大空小学校の初代校長先生をされていたのが木村泰子先生です。
映画は以前も観たことがありましたが、木村先生のお話は初めてでした。
映画に出ていないエピソードを中心に「ふつうってなに?」というテーマで話されました。
何人かの生徒とのふれあいを話されていましたが、印象に残ったお話が2つ
一人の生徒は小学校1年生のわずか10日程通っただけで不登校となり、6年生の時に大空小学校に転入してきます。
この子は紆余曲折しながら、友達や先生が「受け入れる」ことで学校になじみ始め、木村先生もほっとしていた時、その生徒のお母さんが連絡ノートに書いてある言葉に愕然となったそうです。
詳しくは書けませんが、先生や友達がこの子を「受け入れる」という気持ちがある限り、この子は特別視されているんだということが、お母さんの言葉で木村先生は気づいたそうです。
もう一つのエピソード
別のある生徒は、授業中に突然大声を出します。授業中でも教室を抜け出します。
4月に長く特別支援教育に携わった先生が小学校に転任してきて、初めてこの生徒の「支援」に入ったときです。
みんなが静かに書き物を始めたとき、いつものようにその生徒が大声を出したときです。
その先生は、生徒の口に手をあてて、「シッ―!」と言った途端、クラスの他の生徒がみんな「先生なんでシッーっていうん?」と聞いたそうです。
先生は、クラスの生徒のためにと思っていったその一言が、逆にクラスのみんなにとっては違和感のあるものだったのです。
このクラスの生徒は誰もが、なぜこの生徒が大声を上げるか、普段の付き合いからなんとなくわかっているそうです。だから大声を上げても「うるさい」とか思わないのです。
「先生は、この子が邪魔やと思ったん?」逆にそう先生に聞いたそうです。
僕もこれまで障がいがある若者の就労支援に取り組んできました。
今は「インクルーシブ教育」といって、多様性を重んじ障がいの有無にかかわらず一緒に教育を実施しようという流れになっています。
障がいだけでなく例えば性的マイノリティー等も含めて「多様性の尊重」が叫ばれてきました。
でも、こうした用語を多用する間は、まだ「受け入れる」ことに必死で核心をついていないのではないかと思えてきました。
究極の姿は、障がいのある子の姿も「当たり前」「気にもならない」。
そんな状況になることがあるべき姿で、意識している状況ではまだまだだということを強く感じました。
もちろん、その過程に行くための一時期として、声高に叫ぶ時期も必要でしょう。
しかし、大空小学校の子供たちが、生き生きと映像として見せてくれた気負いのない「一緒にいる姿」こそが多様性のある社会の姿だと深く感じた講演でした。
機会があれば、ぜひご覧になってください。
みんなの学校 公式サイト http://minna-movie.jp/